株式会社TOA 代表取締役橋本 拓也TAKUYA HASHIMOTO
郷愁の念 そんな気持ちの始まりかもしれない。
きらめく海、季節ごとに変わる山々の緑や鈴なりに成ったみかんの黄色。本業である石油関連会社の東京本社や海外勤務でふるさとを離れた30年の間、生まれ育った和歌山を懐かしむ日が多くあった。
和歌山の美味しいものをもっと知ってもらうことはできないだろうか。特に果物において、和歌山は生産高日本一になるほど、あらゆる果物がみずみずしく美味しい。みかん、梅、桃、柿、ゆず・・どれをとってもこれ以上のものはない。ずっと思い描いていたのは、そんな果物を使って、この地でワインを造ることだった。
縁あって、和歌山は湯浅の地でワイナリーが出来ることに深く感謝したい。湯浅は日本の醤油発祥の地として、古くから醸造の歴史があり、その文化が人々の生活に根付く町。この地だからこそ、おそらくどこも真似出来ない質の高いワインが出来ると確信している。
昔から、簡単に出来ることに興味はなかった。どうすればいいのかをひたすら考え、そして日夜努力を続ける、行動をする。険しい道ほど何だか面白い。しかし、いつもそれは一人でできるものではなく、多くの人々の知恵と力が必要だ。和歌山におけるブドウ栽培は大変険しい道だった。果物王国として名高い和歌山においてしても、その土壌や天候などから、ブドウそれもワインに適したブドウだけは、難しいとされていたからだ。
しかし、私たちは2017年、ついに和歌山は有田の地で、ワイン用ブドウの栽培とワインの醸造に成功した。これは、その道のプロが集まってくれたこと、そして共に考え試行錯誤をし、苦労をした結果に他ならない。私のワイン造りへの夢は、集まってくれた仲間と共に、1段1段着実に登っているのである。
私たちがつくるワインは、和歌山の情景が目に浮かぶような味である。近い将来、 湯浅で栽培したぶどうで作るmade in yuasa のワインを、堂々と海外に発信していきたい。
1955年日本有数のみかんの産地和歌山県有田市に生まれる18歳のときに石油関連会社に就職。東京本社、シンガポール支社勤務などを経て2011年 株式会社TOA(ティーオーエー)代表取締役社長就任(旧東亜ドラム油業株式会社)、地元和歌山の地に腰を据える。